台湾における文具産業はかなり遅れてスタートしました。第二次大戦前は、粗末な鉛筆メーカーが一社あるだけで、戦後しばらくは極端な文具不足の状態で、ほぼ完全に輸入に頼っていました。台湾の文具産業は輸入ビジネスから開始したといえます。ペン、鉛筆、クレヨン、カーボン紙、謄写印刷用原紙、水彩絵の具、インク、印刷用インクなどの量産メーカーが1950年代に次々と操業し、台湾製の文具は、日本、中国、アメリカからの供給を部分的に代替するようになりました。そして1960年代に入って、台湾メーカーは国内、輸出の両市場で強みを発揮しはじめ、その後三十年、高い輸入関税と為替レートに守られて、産業全体が大きく発展しましたが、関税引き下げ、台湾ドルの相対的価値上昇を経て、外国製の高級文具が台湾に入ってくるようになり、台湾国内市場で厳しい競争が繰り広げられました。
台湾文具産業はこれまで、コピー機の登場、コンピューターの普及という二度の大きな転換期を経験しています。1970年代からコピー機を使用する機会が増えたため、カーボン紙や謄写印刷用原紙の需要が減り続け、後のPCの普及はペンや紙製品の需要を激減させました。これらの持続的な技術革新は一部の文具に大きなインパクトを与え、長い伝統を持つ多くの文具が忘れられていきました。
しかも、この業界は労働集約型産業なので、賃金の上昇にともなう労働者意識の台頭で、中国製や東南アジア製との競争力が削がれていったのも事実です。
最近五年間において、台湾経済全体に占める文具産業の売上高と付加価値は、あまり変わっていません。
文具産業は比較的成熟した産業といえることから、市場はマクロ経済、国民所得、人口増減といった因子を統合した全体の趨勢の影響を受けます。GDPの成長と国民所得の増加にともない、純粋なニーズに加えて、品質やデザインのよさが購入を決定する要因となってきており、業界は付加価値の高い文具を開発する傾向にあります。
日本はかつて台湾文具需要に対する主要供給元でしたが、最近の円の高止まりが輸入コストを押し上げ、台湾製文具の品質向上もあって、日本からの輸入量はあまり伸びていません。しかし、賃金水準の低い中国や東南アジアの製品に押されて、台湾からアメリカへの輸出も年々減り続けています。
幸いにも、技術革新と機械化により、この労働集約的産業の雇用率もしだいに低下してきています。
そして、環境保護意識の台頭が文具製造の原料に変化をもたらしています。たとえば、メモ帳のカバーは、かつてはポリ塩化ビニルだったところが、生物分解可能なプラスチック材によって置き換えられており、鉛筆は環境にやさしいという評判によって復活傾向にあります。
文具産業に影響を与えうるのはほとんど、マクロ経済、国民所得、人口増減という三つの因子です。マクロ経済は成長を続け、国民所得も増え続けると見込まれていることから、文具産業も健全な成長を続けると予測されています。そして、付加価値の高い製品を開発しようとする地元メーカーの努力も継続すると思われ、産業全体の売上高と付加価値は5、6%のプラス成長を続けると予想されます。下表は、台湾経済研究院IBISデータベースによる予測の詳細です。
台湾文具産業の売上高と付加価値増減の予測
単位:台湾ドル百万元
年 | 売上高 | 付加価値 | ||
(NT$) | 成長率 | (NT$) | 成長率 | |
1998 | 18,812* | 5.70% | 11,692* | 6.16% |
1999 | 19,955* | 6.08% | 12,370* | 5.80% |
2000 | 21,098* | 5.73% | 13,047* | 5.47% |
2001 | 22,242* | 5.42% | 13,725* | 5.20% |
2002 | 23,385* | 5.14% | 14,403* | 4.94% |
* 資料出所:台湾経済研究院IBISデータベース
地球規模での産業構造や市場の変化に対処するため、台湾メーカーは積極的に製品を改善してきただけでなく、高付加価値製品と呼べるレベルにまでアップグレードさせました。これからの台湾文具産業はより高い付加価値の製品を提供していくものと考えられます。
テクノロジーの進歩、特にコンピューターの応用と普及で、一部の文具はもはや使用されなくなりましたが、このハイテク化の衝撃に対処するには、産業全体の調整と革新性が求められます。PC周辺機器関連の文具アイテムなどは、産業全体を維持していくために適切な路線であるといえるでしょう。
円高による輸入コストの増大、台湾製文具の品質向上により、台湾製文具は地元市場で日本製と十分に太刀打ちできるまでになりました。日本からの輸入は減り続けると予想されています。グローバルな産業構造の変化に直面して地元メーカーは、クリップやホッチキスの針など、労働集約的な小型のアイテムの生産拠点を、賃金コストの低い中国や東南アジアにシフトさせるとともに、ホッチキス、穴あけパンチ、鉛筆削り、カッターナイフなど、付加価値の高い大型アイテムの生産を台湾で行うことにフォーカスを当てています。台湾は今や、大型文具の主要輸出元である日本の競争相手になりました。地元供給業者の研究開発努力、品質改善、輸出先の関税低減措置などもあって、台湾製文具の輸出の将来は明るいと考えられます。
日本のような先進国はすでに文具の生産ラインを全自動化していますが、地元メーカーもこれに追いつくよう努力する必要があります。現在、台湾文具産業最大の問題点は技術の移転です。メーカーが技術の移転や新しい製造テクノロジーの開発に成功すれば、賃金コストを削減して経営効率を上げることができますが、この傾向が続くと、一部の中小企業にとっては、地元供給業者との取引や従業員を削減することを余儀なくされるかもしれません。
台湾文具産業は、生産量と販売量の正確な最新データを取得して在庫数量の食い違い発生を防止するため、バーコードシステム導入を前向きに進めています。このシステムが定着すれば、産業全体の発展を大いに助けてくれるのは間違いないでしょう。
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